眼鏡の基礎を知るシリーズ #2
シリーズ #1「フレームシェイプ編」はこちら → 眼鏡フレームの形(シェイプ)で印象はこう変わる
メガネを選ぶとき、デザインや色に目が行きがちですよね。
でも、「どんな素材でできているか」まで意識して選んだ経験はありますか?
素材は見た目だけでなく、重さ・肌触り・丈夫さ・人に与える印象まで決める重要な要素です。
この記事では、アセテートやチタンといった主要素材から、紙や水牛の角といった個性的な豆知識素材まで、素材ごとの特徴とファッション的なイメージをまとめて解説します。
「次のフレーム選びで失敗したくない」「自分に合った素材を知りたい」と感じている方に、きっと役立てていただけます。
眼鏡フレームの素材って、どんな種類があるの?
素材はフレームの「個性」を決める大切な要素
眼鏡フレームの素材は、単なる「入れ物」ではありません。
素材が変わると、軽さ・質感・色の深み・弾力性がまったく異なります。
そして、「この素材を選んだ人」というイメージが、かけた瞬間の印象に自然と乗ってきます。
たとえば、分厚いアセテートフレームをかけている人には「こだわりのある人」という雰囲気が漂います。
一方、細いチタンフレームには「洗練されたビジネスパーソン」という空気感があります。
素材を知ることは、自分がなりたいイメージを眼鏡で表現するための第一歩です。
大きく分けると「プラスチック系」と「金属系」の2種類
フレーム素材は大きく2つに分けられます。
- プラスチック系:アセテート・セルロイド・TR90など。色や形の自由度が高く、デザイン性豊か。
- 金属系:チタン・βチタン・ステンレスなど。軽量・耐久性が高く、シャープな見た目に。
どちらが優れているという話ではなく、ライフスタイルや好みに合わせて選ぶものです。
それぞれの特徴を知ったうえで、自分に合う一本を選んでみましょう。
主要素材①プラスチック系——アセテート・セルロイド・TR90
アセテート——発色と質感が美しい、現代の主流素材
アセテート(セルロースアセテート)は、植物由来の天然素材から作られるプラスチックです。
現在のおしゃれなメガネの多くがこの素材を使っており、いわば「現代の定番」です。
特徴まとめ
- 発色が豊かで、深みのある色・模様が出せる
- 適度な重さがあり、しっかりした質感
- 加工しやすく、フレームのデザイン自由度が高い
- プラスチックの中では比較的丈夫
人に与える印象
アセテートフレームは「感度が高く、個性を大切にする人」というイメージを作ります。
太フレームで個性を出すことも、薄いフレームで上品さを演出することもできます。
ファッション好きな方、アート・クリエイティブ系のお仕事の方によく似合う素材です。
注意点
熱に弱い面があるため、車の中など高温になる場所への放置は変形の原因になります。
また、長期間使用すると色あせや表面の劣化が起きることもあります。
私がアセテートのフレームを初めて手にしたのは、「ちょっといいメガネを買ってみよう」と思ったタイミングでした。それまでは量販店でフレームを選んでいたので、素材の違いをあまり意識していなかったのです。手にした瞬間、まず光沢の深さに驚きました。発色が鮮やかで、「これは本物だ」という確かな感触がありました。自然と「大切に使っていこう」という気持ちが湧いてきたのを、今でもよく覚えています。
セルロイド——手間がかかるからこそ宿る「職人の魂」
セルロイドは、アセテートよりも歴史が古い素材です。
一時はプラスチックに押されて衰退しかけましたが、今も職人仕事を愛するブランドや眼鏡産地(福井県鯖江など)で大切に作り続けられています。
特徴まとめ
- アセテートより発色・光沢が深く、美しい仕上がり
- 手作業での磨き・成形が中心で、機械化しにくい
- 独特の風合いと経年変化を楽しめる
- 入手できる品は希少で、価格も高め
人に与える印象
「道具に本物を求める人」「工芸・クラフトに価値を感じる人」というイメージが強く出ます。
ゆっくり時間をかけて選ぶ、知る人ぞ知る素材です。
注意点
可燃性が高いため、現代の大量生産フレームには使われにくくなっています。
取り扱いに注意が必要で、正規の眼鏡専門店での購入・調整を推奨します。
じつは私は、まだセルロイドのメガネを手にしたことがありません。ただ、万年筆でセルロイド素材に触れた経験があり、あの独特のしっとりとした質感は今でも指に残っています。アセテートとはまた異なる、肌になじむような触り心地です。「いつかセルロイドのフレームを1本手に入れたい」と思っている素材のひとつです。
TR90(ポリアミド)——スポーツ・アクティブ派に支持される軽量樹脂
TR90は、スイス・EMS社が開発したナイロン系の軽量プラスチックです。
スポーツ用メガネや子ども用フレームによく使われており、実用性に特化した素材です。
特徴まとめ
- 非常に軽く、長時間かけていても疲れにくい
- 柔軟性が高く、変形してもほぼ元の形に戻る
- 耐薬品性・耐熱性に優れている
- 金属アレルギーの方でも安心して使える
人に与える印象
「アクティブで機能性重視の人」「動きやすさを大切にする人」というイメージです。
スポーツシーンや子育て中の方、とにかく軽さを求める方に選ばれやすい素材です。
一方、フォーマルなシーンではやや存在感が薄くなる場合もあります。
主要素材②金属系——チタン・βチタン・ステンレス・サンプラチナ
チタン——軽さ・強さ・アレルギー対応の「三拍子揃った素材」
チタンは、金属フレームの中でもっとも広く使われている素材のひとつです。
日本の鯖江産地の職人技術が世界をリードしており、品質の高さで知られています。
特徴まとめ
- 軽量でありながら強度が高い
- 金属アレルギーを起こしにくい(ニッケルをほぼ含まない)
- 耐腐食性が高く、汗や皮脂に強い
- 長期使用でも変形・劣化しにくい
人に与える印象
「知性的で洗練された人」「実直なビジネスパーソン」というイメージを持たせます。
細フレームのチタン眼鏡は、スーツ姿にとてもよく馴染みます。
年齢を問わず使いやすく、初めてメガネを選ぶ方にもおすすめの素材です。
βチタン——しなやかさが魅力のワンランク上の選択肢
βチタン(ベータチタン)は、チタンにバナジウムやアルミニウムなどを加えた合金です。
通常のチタンよりも弾力性が高く、独特の「しなやかさ」があります。
特徴まとめ
- 通常のチタンより柔軟性が高く、顔にフィットしやすい
- 側圧(フレームが顔を押す力)が調整しやすい
- 長時間使用でも疲れにくく、かけ心地が良い
- 価格はチタンより高め
人に与える印象
チタンと同様のスマートな印象に加え、「品質にこだわる目利きの人」というニュアンスが加わります。
かけ心地の良さを重視する方、長時間デスクワークをする方に特に向いています。
私はβチタンのフレームを5本持っています。とにかくしなやかで柔らかく、かけていることを忘れるほどです。メインで使っているアセテートの厚みあるフレームは、連日かけていると耳が痛くなることがあります。そんなときにβチタンのフレームに替えると、かけ心地の良さに毎回ほっとします。また、テンプル(耳にかけるツルの部分)にβチタン・リム(レンズを囲む前枠)にアセテートを組み合わせたコンビネーションフレームは、おしゃれとかけ心地を両立できるのでとくにおすすめです。
ステンレス——コストパフォーマンスに優れたスタンダード金属
ステンレス(ステンレス鋼)は、手頃な価格帯のメガネに多く使われる金属素材です。
「コスパの良い金属フレーム」として、幅広い層に支持されています。
特徴まとめ
- チタンに比べて価格が抑えられる
- 耐腐食性・耐久性は十分な水準
- 加工しやすく、さまざまなデザインに対応できる
- やや重いため、長時間使用では疲れを感じる場合も
人に与える印象
「無駄がなくシャープな人」「実用的センスを持つ人」というイメージです。
デザインの幅が広いため、シンプルなものからクラシカルなものまで選びやすい素材です。
サンプラチナ——眼鏡ファンの間でブームが再燃している伝統金属
サンプラチナ(洋白・ニッケルシルバーとも呼ばれる)は、銅・ニッケル・亜鉛を主成分とする合金です。
名前に「プラチナ」とありますが、白金は含まれていません。銀白色の美しい見た目から名付けられました。
古くからメガネフレームに使われてきた伝統素材ですが、担い手の職人が減少して生産数が限られてきたことで、
かえって「本物を知る眼鏡ファン」の間での希少価値が高まり、近年ふたたびブームの兆しがあります。
特徴まとめ
- 美しい銀白色の光沢があり、高級感がある
- 加工性が高く、細かいディテールの表現が得意
- 適度な硬さと弾力性を持ち、フィッティング調整がしやすい
- チタンより重さはあるが、扱いやすさと仕上がりの美しさで選ばれている
人に与える印象
「クラシカルで上品な人」「本物のクラフトマンシップを知っている人」というイメージを持たせます。
アンティーク調のデザインとの相性が抜群で、ゆっくり眼鏡を選ぶ大人の方に響く素材です。
注意点
ニッケルを含む合金のため、金属アレルギーがある方は事前に確認が必要です。
また、汗に触れると変色しやすい場合があるため、定期的なお手入れをおすすめします。
新世代素材——3Dプリントフレーム
3Dプリントフレーム——従来製法では作れない形を実現する最新技術
3Dプリントフレームの素材も、実はポリアミド(ナイロン)です。
TR90と同じ素材でありながら、型に流し込む従来の製法ではなく、粉末を層ごとに積み重ねて形を作る3Dプリントで製造します。
「同じ素材、まったく違う作り方」——その自由度が、従来製法では不可能だった複雑な形状や1点からのオーダーメイドを実現しています。
まだ選べるブランドは限られますが、オーダーメイド眼鏡の世界で注目を集めています。
特徴まとめ
- 従来の型抜き製法では作れない複雑な形状を実現できる
- 1点からオーダーメイド対応が可能
- 軽量かつ適度な弾力性を持つ
- 表面仕上げの質は素材・技術によって差がある
人に与える印象
「最先端を積極的に取り入れる人」「唯一無二の個性を大切にする人」というイメージです。
既成品では満足できない方、まったく同じフレームを誰も持っていない眼鏡を求める方にとって、魅力的な選択肢です。
知っておくと楽しい「豆知識素材」
メガネフレームの世界には、主要素材の枠を超えた、思わず誰かに話したくなる個性的な素材も存在します。
ここでは3つをさらりと紹介します。
紙(ペーパーフレーム)——軽さと遊び心の極北
ハニカム構造の紙や特殊加工紙で作られたフレームです。
信じられないほど軽く、「メガネってこんなに軽くできるの?」という驚きを与えてくれます。
デイリーユースよりも「体験・コレクション」として楽しむ意味合いが強いアイテムです。
革(レザーフレーム)——素材そのものがファッションステートメント
テンプル(ツル)部分や前枠の一部に本革を使ったフレームです。
経年変化を楽しめる革の風合いが、眼鏡を「育てる」喜びに変えてくれます。
ファッションを語るように眼鏡を語りたい方に刺さる素材です。
バッファローホーン——水牛の角が眼鏡になる、手工芸の極致
水牛の角を削り出して作るフレームは、手工芸品として価値が高い一品です。
一本一本に異なる色・模様が出るため、「世界にひとつ」の眼鏡になります。
非常に希少で高価ですが、その存在感は比べようがありません。
バッファローホーンや紙フレームは、まだ実際に手にしたことがありません。YouTubeで紹介されているのを見て存在を知りました。とくに印象的だったのがバッファローホーンです。天然素材ならではの個体差があり、同じモデルでも1本1本に違う表情が出るのだそうです。価格の高さに二の足を踏んでいますが、「これだ」と思える1本に出会えたら、いつか挑戦してみたいですね。
素材選びで気をつけたいこと——金属アレルギーと扱い方
金属アレルギーが気になる方はチタン・βチタン・樹脂系を選ぼう
金属アレルギーがある方にとって、フレーム素材の選択はとても大切です。
ニッケルを含む金属素材(一部のステンレスや合金フレーム)はアレルギー反応を引き起こす場合があります。
金属アレルギー対応素材の目安
| 素材 | アレルギーリスク | 備考 |
|---|---|---|
| チタン | 低い | 肌への刺激が少ない |
| βチタン | 低い | チタン同様に安心 |
| アセテート | ほぼなし | 植物由来のプラスチック |
| TR90 | ほぼなし | 純プラスチック |
| セルロイド | ほぼなし | 植物由来 |
| ステンレス | 製品による | ニッケルフリー品を確認 |
「金属アレルギーが心配」という方は、チタン・βチタン・樹脂系(アセテート・TR90)を中心に選ぶと安心です。
購入前に店員さんへ確認することをおすすめします。
金属アレルギー対応フレームをお探しの方には、試着サービス付きのオンラインメガネショップも選択肢のひとつです。
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素材ごとのお手入れポイントと注意事項
素材によってお手入れの方法や注意点が異なります。
- アセテート・セルロイド:高温・直射日光を避ける。拭くときは柔らかいクロスを使う。
- チタン・βチタン:汗・皮脂が付いたら水洗い後によく拭く。海水・塩水には注意。
- ステンレス:基本的に丈夫だが、メッキが剥がれると錆びる場合も。
- TR90:洗剤・アルコールに比較的強いが、強い有機溶剤は避ける。
- サンプラチナ:汗・皮脂が付きやすいため、使用後は柔らかいクロスで拭く習慣を。
まとめ——素材を知ることがメガネ選びの楽しさを広げる
眼鏡フレームの素材には、それぞれ異なる個性・物語・印象があります。
- アセテートは「発色と個性」
- セルロイドは「工芸と希少性」
- チタンは「軽さと信頼感」
- βチタンは「しなやかなフィット感」
- TR90は「機能と軽量性」
- サンプラチナは「上品なクラシックと職人技」
- 3Dプリントは「唯一無二の独自性」
「何となく選んでいた」眼鏡も、素材を意識して選ぶと、かける楽しみが増します。
次のフレーム選びでは、デザインだけでなく素材にも目を向けてみてください。
きっと、自分だけのお気に入りの一本に出会えるはずです。
機能だけでなく「印象・物語」で素材を選んでみよう
素材は「スペックの数値」だけで語るには、もったいないものです。
職人が丁寧に磨いたセルロイドの深い光沢、アセテートの豊かな色の重なり——そこには、作り手の意図と物語があります。
メガネを選ぶときに「この素材はどんな印象を持たせてくれるか?」という問いを加えると、選択肢がぐっと広がります。
眼鏡選びをもっと楽しみたい方は、実際に様々な素材のフレームを手に取って比べてみましょう。
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